~低侵襲側方侵入腰椎前方固定術(XLIF)~

今までは、”加齢による変化のひとつ” としてかたづけられてしまっていた腰椎脊柱管狭窄症(ようついせきちゅうかんきょうさくしょう)。高齢化社会が叫ばれる昨今、「しょうがない」では、すまされない問題になってきています。

症状

腰の靭帯(じんたい)や軟骨の加齢による変形などのために、腰椎の脊柱管が狭くなり、中を通る神経や血管が圧迫され、血流が悪くなって腰下肢の痛みやしびれが出現します。痛みやしびれが強く、下肢麻痺や排尿排便障害が出てきたなどの場合には、手術ということになります。

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治療

腰椎の変形や不安定性を伴う腰部脊柱管狭窄症に対し、本院では、2013年より日本に導入認可された新しい手術法「低侵襲側方侵入腰椎前方固定術(XLIF)」を、北信越地区でいち早く行っています。

低侵襲側方侵入腰椎前方固定術(XLIF)

XLIFとは、損傷している椎間板を取り除き、骨を器具で固定して、脊髄の安定性を高める手術方法です。神経を直接触らないため、脊柱管内の神経に対し安全性が高く、さらに、出血が従来に比べ非常に少なく、体への負担が少ない手術方法です。

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神経の周囲(脊柱管)の骨や靭帯を直接削っていないのに、手術前後で比べると髄液(造影剤で白く見える部分)の流れが良くなっているのが分かります。

XLIFの実施

XLIFは全国でも限られた医師と医療機関でのみ実施されており、脊椎脊髄手術、とくに脊椎前方固定術の豊富な経験数とXLIF専用の手術研修を受けて認定医となる必要があります。また手術には安全性確保のため、XLIF専用の脊髄神経機能のモニタリング装置が必要です。
当院では2013年から設置導入し、他の難易度の高い脊椎・脊髄手術にも使用しています。

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手術の流れ

脊柱管狭窄症の手術の必要性は理解できても、やはり「腰の骨の手術」と聞くと恐そうですし、ましてや身体の弱っているお年寄りの手術では、家族の方も安全性などに心配されると思います。
そこで、新しい腰椎の手術(XLIF)とはいったいどのようなものかを説明します。

  1. 一か所の腰椎固定では腰部に約3cmの切開が2ヵ所と側腹部に約4cmの皮切で手術を実施します。側腹部の皮切から筋間を通して特殊な開創器(手術用の筒)を挿入設置して、脊髄モニタリングで確認しながら、筋肉内を通る大腿神経などを避けながら椎間板内に人工骨と自家骨を挿入移植します。

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  2. その後、腰部の皮膚切開部から筋肉を大きく切離展開することなく、レントゲン透視撮影下に固定術を行います。この際にも脊髄モニタリングを使用し神経に対し安全性を高めています。

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  3. 筋膜や皮下を抗菌剤を含んだ吸収性の糸で縫合し、切開した創部にはテープを貼るだけで、手術は終了です。

手術後

原則、手術翌日より座位、2日目より起立・歩行を開始します。入院期間は約2~3週程度ですが、病態により異なります。また手術後は硬いコルセットを装着します。

XLIFのメリット

背中側の筋を痛めない

身体の側方から小さな開創器を挿入するので、背中側の筋や神経に触れず、手術の傷による術後の痛みが軽減できます。脊柱管内の神経に対し安全性が高く体への負担が少ないため、術後の回復も早くなります。

出血が少ない

筋肉の間から移植骨や内固定金属挿入するだけの手術なので、出血従来に比べ非常に少なく、痛みも少なくなります。

大きなケージ(自家骨を入れる籠)が設置可能

椎間板に従来の脊椎固定術よりも大きなケージを設置することができるので、術後の症状再発が少ないです。さらに、術後の安定性が増し、骨がつくのが早くなることが期待されます。

術後の安静期間がない

術後の安静期間はなく、2日間ほどでコルセットを装着し起きることが可能。

XLIFが困難なケース

狭窄が高度な症例や骨化した靭帯が存在する場合では使用が難しい

狭窄が高度の場合は、神経の負担を直接取り除くことができないので、XLIF単独で実施するのが難しくなります。その場合、後方から除圧術を追加するか、従来の固定術に切り替えます。

筋肉間を通過する大腿神経群を損傷するおそれ

侵入側の筋肉内を通る股関節や膝関節などの下肢を動かす抹消神経を損傷するおそれがありますが、電気刺激を利用した専用のモニターを使用し、神経を確認しながら手術ができるようにしていますので、神経障害の発生の可能性は低く、発生しても一時的なものでほとんどが回復すると考えられます。

当然、病態や症状には個人差がありますのでこの手術ができない場合や、予定が変更となることがあります。また、この手術は、狭窄症の原因や程度により、若干の方法・固定範囲の違いがありますのでぜひ当院整形外科へご相談ください。