鼠径部ヘルニア外来について
当院では令和7年9月より外科外来内に『鼠径部ヘルニア外来』を開設いたしました。当外来では鼠径部のヘルニアの診断・治療を行います。診察では経験豊富な担当医が診察・病状説明や患者さんの状況にあわせた治療法の提示を行い、安全を第一に、患者さんの身体への負担が少なく早期回復が可能となる腹腔鏡下手術を中心とした治療を行っています。
また、心疾患や腎疾患、糖尿病などの疾患を持っている方は循環器内科や腎臓内科などの専門医と協力しながら手術を行います。
腹部のヘルニアについて
当外来で治療を行うヘルニアには主に以下のものがあります。
鼠径 (そけい)ヘルニア
大腿 (だいたい)ヘルニア
ヘルニアの症状としては、「最近、足 (下肢)のつけねのところが腫れてきた」というものが多いです。ヘルニアは様子をみていると徐々に大きくなってくることが多く、自然に治る病気ではありません。また、とびだしているヘルニア嚢 (ヘルニアのふくろ)の中に腸管がはまり込み戻らなくなった場合には、中にはまった腸管が壊死を起こし緊急手術が必要なこともあります。緊急手術となった場合には通常の予定手術に比べ合併症を併発する可能性が高くなるとともに、予定手術と同じような手術術式が行えないこともあります。この様なことを避けるため、身体の状態に問題がないうちに手術を行うことをお勧めしています。
鼠径 (そけい)ヘルニア
鼠径 (そけい)部の膨隆を主な症状として認めることが多く、その他、痛みや違和感をともなうことがあります。一般に脱腸とも呼ばれ、乳幼児から高齢者まであらゆる年代に発症するヘルニアの中でも最も多い疾患です。治療法としては、人工補強材 (メッシュ)を用いた手術を行いますが、従来から行われている皮膚を切開して行う方法と、腹腔鏡を用いた方法があります。
大腿 (だいたい)ヘルニア
鼠径 (そけい)部よりやや足側の膨隆を症状として認めるヘルニアで、女性に多く、腸管の嵌頓 (かんとん)のため緊急手術となることが多いヘルニアです。治療法としては、人工補強材 (メッシュ)を用いた手術を行いますが、従来から行われている皮膚を切開して手術を行う方法と、腹腔鏡を用いて手術を行う方法があります。
鼠径部ヘルニア外来への受診について
外来診療は平日の午前中に行っています。通常通り外科外来を受診してください。また紹介状 (診療情報提供書)のある方は紹介状を持参の上、受診してください。
外来担当医は以下のとおりです。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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1診 | 堀川 | 福島 | 堀川 | ||
2診 | 今川 | 今川 | 宮永 |
ヘルニアの治療法について
ヘルニアは身体の中の筋肉や腱膜が加齢とともに弱くなり、弱くなった部分から臓器が脱出または突出することによって起こります。このため手術では通常、人工補強材 (メッシュ)を用いて弱くなった部分を補強する手術が行われます。
このメッシュを用いた手術法には、従来からの皮膚を切開して行う方法と、腹腔鏡を用いた方法があります。どの手術法を行うかは患者さんの身体状態やこれまでに受けてきた手術などを確認した上で選択されます。詳細は担当医にご相談ください。
鼠径 (そけい)ヘルニアに対する腹腔鏡下手術について
鼠径 (そけい)ヘルニアに対する腹腔鏡下手術には、経腹的腹膜外修復法 (TAPP法)と腹膜外修復法 (TEP法)があります。
〇経腹的腹膜外修復法、TAPP法
臍部と下腹部の3か所にカメラと鉗子 (手術を行うための器械)を挿入するための孔(あな)を開けて、お腹の中をモニターで見ながらヘルニア修復術を行う手術法です。腹腔鏡を用いてヘルニアの原因となっている部位を確認し、腹膜と筋肉の間に人工補強材 (メッシュ)を挿入・固定し補強します。お腹の中から鼠径部を観察できるため、ヘルニアの診断が容易に行え、症状のない反対側のヘルニアの診断も可能です。手術には全身麻酔が必要ですが、手術後の痛みも少ない手術法です。
〇腹膜外修復法 (TEP法)
臍 (さい)部に切開をおきカメラと鉗子を挿入して腹壁の筋肉と腹膜の隙間から鼠径 (そけい)部に到達し、ヘルニアの原因となっている部位を確認して、腹膜と筋肉の間に人工補強材 (メッシュ)を挿入・固定し補強する方法です。整容性の観点から、1か所の切開で行うこともできます。
その他の腹部ヘルニアについて
下記の病態についても対応しております。ご相談ください。
☆臍 (さい)ヘルニア
臍 (へそ)の膨隆という症状を認めます。臍 (へそ)は臍の尾が閉じた部位で元々脆弱な部位です。これに肥満や妊娠など腹圧がかかることで発症すると考えられています。ヘルニアが大きくなると痛みや違和感などの症状が出現し、腸管が嵌頓 (かんとん)すると緊急手術が必要となることがあります。治療法としては、小さなものでは縫合閉鎖を行いますが、大きいものでは人工補強材 (メッシュ)を用いた手術を行います。これには従来から行われている皮膚を切開して行う方法と、腹腔鏡を用いた方法があります。
☆腹壁瘢痕 (ふくへきはんこん)ヘルニア
以前に開腹手術を受けたことがある方で、手術の際に縫合閉鎖した手術創が脆弱となり、さらに腹圧がかかることで脆弱となった部位から腹部の臓器が突出し起こるものです。通常、立位になったり腹圧をかけたりしたときに腹部の膨隆を認めるという症状を認めます。ヘルニアが大きくなると痛みや違和感などの症状が出現し、腸管が嵌頓 (かんとん)すると緊急手術が必要となることがあります。治療法としては、小さなものでは縫合閉鎖を行いますが、大きいものでは人工補強材 (メッシュ)を用いた手術を行います。これには従来から行われている皮膚を切開して行う方法と、腹腔鏡を用いた方法があります。