今までは、”腰椎椎間板ヘルニア” の治療法には薬物療法の他には、内視鏡や顕微鏡を用いた後方椎間板切除術(Love法、Casper法、MED法)や経皮的脊椎内視鏡手術(FESS,など)などの手術療法が一般的でしたが、手術侵襲による神経へのダメージやヘルニアの再発などが危惧されてきました。
酵素のコンドリアーゼ(ヘルニコア)を使用した椎間板内酵素注入療法は, 2018 年に本邦で保険収載された腰椎椎間板ヘルニアの治療法の一つで、椎間板内に酵素を含んだ薬剤(ヘルニコア)を直接注入し、ヘルニアによる神経圧迫を軽減させる治療です。この治療は、手術療法と保存療法の中間に位置し、患者への負担が少ないのが特徴です。当院も2018年より日本脊椎病学会より認定施設にしていただき、既に20例以上の経験があり、良好な臨床成績を学会などに報告しております。
作業機序:
コンドリアーゼは、髄核内のプロテオグリカンの保水能を低下させ、椎間板内の圧力を下げます。これにより、飛び出した髄核が縮小し、神経圧迫が軽減されます。
利点:
- 皮膚の切開はなく、注射のみで、身体的負担が少ない。
- 入院期間が短くあるいは無く、早期の社会復帰が期待できます。
- 痛みや痺れの軽減効果が期待できます(有効率は約75%)。
欠点:
- 治療効果は数週間から数ヶ月後に現れるため、即効性はない。
- アレルギー反応や一時的な腰痛などの副作用が起こることがあります。
適応症:
- 腰椎椎間板ヘルニアと診断された成人。
- 保存療法で症状が改善しない場合。
- 手術に抵抗がある場合や全身麻酔のリスクが高い場合。
注意点:
- ヘルニコアは、線維輪の後方にある靭帯まで突き破って飛び出して変位したヘルニアには適応にならない。
- アレルギー体質の方は、慎重な検討が必要。
- 治療効果が少ない場合、手術療法を2期的に行うことが可能であるが一定期間待機する必要があります。(約11%が手術に移行) 逆に89%が手術を回避できたと報告されています。
治療の流れ:
- 医師による問診と身体検査を行います。
- MRIなどの画像検査でヘルニアの状況を評価します。
- 局所麻酔を行います。
- 手術室にて:X線検査を見ながら、椎間板に針を刺して薬剤を注入します。
- 注射直後は安静にし、副作用がないか確認します。
- 治療効果を実感するまで、数週間から数ヶ月は、ほかの薬物療法やリハビリテーションが必要になる場合があります。
当院では日帰り、もしくは1泊2日の入院で実施しております。
※本治療は適応が限られておりますのでヘルニアのタイプや症状により、他の治療方法をお勧めする場合がございます。